睡眠は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の異なった2つの睡眠状態で成り立っています。
よく「ノンレム睡眠は深い眠り、レム睡眠は浅い眠り」という話を耳にしますが、これは厳密には正しくありません。
「深い眠り」と表現されるノンレム睡眠には眠りの浅い状態と深い状態があり、レム睡眠はノンレム睡眠とはまったく異なった非常に特殊な性質を持っています。
ノンレム睡眠とレム睡眠の違いと、それぞれが果たしている役割をご紹介します。
浅い眠りと深い眠りが共存するノンレム睡眠
ノンレム睡眠は「脳の休息と体のメンテナスのための睡眠」です。
ノンレム睡眠には眠りの浅い状態と深い状態があり、浅い睡眠状態の「ステージ1」から深い睡眠状態の「ステージ4」までの4つに区別され、深い睡眠状態のステージ3とステージ4は合わせて「徐波睡眠(じょはすいみん)」と呼ばれています。
ノンレム睡眠中の脳は完全に休んだ状態になり、脳を休ませながら起きている間に得た情報の中から不要な情報(怖かったことや不愉快なことなど)を眠りながら緩和・消去しています。
またノンレム睡眠中は、起きている間に傷ついた体のメンテナンスも行われています。
傷ついた細胞の修復や疲労の回復、体の成長などを担う「成長ホルモン」は睡眠中にしか分泌されませんが、その分泌量は眠り始めて最初に迎える徐波睡眠(最も深い睡眠状態=ノンレム睡眠ステージ3・4)に最も多く分泌されます。
このようにノンレム睡眠は脳を休めて体を修復するための睡眠で、前夜に十分な睡眠時間をとったのに昼間に眠気を感じる場合は、前夜の睡眠で十分な深い睡眠(ノンレム睡眠ステージ3・4)が得られていなかったことが考えられます。
特殊な睡眠状態のレム睡眠
レム睡眠は、ノンレム睡眠とは睡眠の状態や性質、役割が根本的に異なった非常に特殊な睡眠状態です。
レム睡眠の最大の特徴は眠りながら非常に速い速度で眼球が動く急速眼球運動「Rapid Eye Movement」が見られる点で、この頭文字から「REM Sleep(レム・スリープ)」と呼ばれています。
レム睡眠は浅い睡眠状態であるノンレム睡眠ステージ1と脳波が似ているため「浅い眠り」と表現されることが多いですが、睡眠の状態や性質、役割がノンレム睡眠とは根本的に異なるため、耳元で大きな音が鳴っても反応できない場合があります。
睡眠の大きな役割は「脳の休息と体のメンテナス」であり、一晩の睡眠の約75%を占めるノンレム睡眠中の脳は完全に休息した状態になりますが、レム睡眠中の脳は起きている時以上に活発に活動しています。
レム睡眠中の脳は、起きている間に得た大量の情報から必要なものと不要なものを眠りながら整理し、必要な記憶の定着や記憶を引き出すための索引作りを行っていることが近年の研究で明らかになっています。
つまり、昼間に体験した出来事や学習によって得た知識などの大切な情報を、レム睡眠中に整理しながら記憶として脳に焼き付けているのです。
レム睡眠中は脳内で大量の情報を処理しているため、反射的に体が動かないように全身の筋肉は弛緩状態(体が動かない状態)になり、またレム睡眠中は交感神経の活動が活発になるため心拍数や呼吸数が不規則に変化する点も特徴として挙げられます。