体が疲れている時は少しでも長く眠った方が良いと思いがちですが…寝過ぎは逆効果です。
睡眠時間は長ければ良いというものではなく、寝過ぎは寝不足以上に体に大きな負担をかけてしまいます。
寝過ぎは体を余計に疲れさせるだけでなく、脳にも悪影響を及ぼす(長すぎる睡眠が脳を老化させる)ことが近年の研究で分かっています。
寝過ぎが脳に悪い理由
睡眠は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の異なった2つの睡眠状態で成り立っており、ノンレム睡眠とレム睡眠は一晩のうちに交互に繰り返して現れます。
睡眠時間が適切な場合、睡眠の前半ではノンレム睡眠が多く出現し、逆に睡眠の後半ではレム睡眠が多く出現しますが、睡眠時間が長すぎると睡眠の後半に出現しやすいレム睡眠ばかり増えてしまい、ノンレム睡眠とレム睡眠のバランスが崩れてしまいます。
ノンレム睡眠中は体と脳が深く眠った状態(休んだ状態)になりますが、レム睡眠中の脳は起きている時以上に活発に動いているため、レム睡眠が過剰に増えると脳が十分な休息をとることができなくなり、かえって疲れやすくなってしまいます。
また長時間横になっていることで体の血流が悪くなり、脳に十分な酸素と栄養が行き渡らなくなってしまうこともあります。
寝過ぎが招く脳機能の低下
イギリスのウォーリック大学は、睡眠時間と脳認知能力の関係について大変興味深い研究結果を発表しています。
50~89歳の男女約9,000人を対象に同大学が行った調査では、50~64歳の人では睡眠時間が6時間未満の人と8時間以上の人が、65~89歳の人では睡眠時間が8時間以上の人がそれぞれ7時間睡眠の人と比べて記憶力と意思決定能力が低下していることが判明しています。
またロンドン大学の調査でも、睡眠は長すぎても短すぎても脳機能に悪影響を与え、寝過ぎによって大脳が実年齢より7歳以上老化することが指摘されています。
睡眠時間が認知機能にどのような影響を与えるかを調べるために同大学が35~55歳の男女5,431人を対象に記憶力や語彙力などのテストを行った結果、7時間睡眠のグループが最もテストの結果が良く、6時間睡眠のグループが次点、さらに6時間未満と8時間以上のグループが続く結果となりました。
また京都府八幡市教育委員会も上記と同様の見解を出しています。
同委員会は全国学力テストと学習状況調査の結果から、睡眠時間が6時間未満と9時間以上の小学6年生、睡眠時間が8時間以上の中学3年生はテストの正答率の低さが顕著であることを指摘しています。
これらの調査・研究から、寝過ぎは寝不足以上に脳機能の低下を招くことが分かります。
食事や運動と同じく、睡眠も「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」だと言えます。
理想の睡眠時間
睡眠には個人差があり、多くの人にとって理想の睡眠時間は7時間前後だと言われていますが、年齢によっても理想の睡眠時間は異なります。
厚生労働省が2014年に改定した「健康づくりのための睡眠指針2014」には「健康な人の睡眠時間は加齢とともに自然に減る」とあり、年齢別の適切な睡眠時間の目安は15歳で8時間、25歳で約7時間、45歳で6時間半、65歳で6時間とされています。
睡眠の良し悪しは翌日のコンディションに直結するため、翌日のコンディションが前夜の睡眠の良し悪しを判断する目安になります。
これらの数値を参考にしつつ、翌日に無理なく自然に起きられて日中も良いコンディションで快適に過ごせた場合の睡眠時間が、ご自身にとって理想の睡眠時間だと考えて良いでしょう。