なかなか寝付けなかったり、夜中に何度も目が覚めたり、しっかり寝たはずなのに翌朝すっきり起きられなかったりと、睡眠に悩みを抱えているお客様が多くいらっしゃいます。
ぐっすり眠れない状態が続くと「枕やマットレスが合っていないのかなぁ」と寝具の買い替えを検討される方が多くいらっしゃいますが、睡眠に大切なことは寝具選びだけではありません。
体に合った寝具を使うことはもちろん大切ですが、眠れない原因が日常の生活習慣にある場合も多く、このような場合はどんな寝具に買い替えても睡眠の質の改善は期待できません。
お金をかけて寝具を買い替えなくても生活習慣を少し見直すだけで睡眠の質が大きく改善することがありますので、今回はぐっすり眠れない方にぜひ試していただきたい「ぐっすり眠るための生活習慣」をダイジェストでご紹介します。
朝(起床時)の習慣
毎朝決まった時間に起きる。
睡眠は体内時計によってコントロールされています。
良い睡眠を得るためには規則正しい生活(毎日同じ時間に起きて同じ時間に寝る)を送り生活のリズムを整えることが重要で、不規則な生活を送ると体内時計と生活リズムが乱れて睡眠に悪影響を及ぼします。
特に睡眠中央値(寝た時間と起きた時間の真ん中の時間、午後11時に寝て午前7時に起きた場合の睡眠中央値は午前3時)を毎日同じ時間に合わせることが重要です。
休日に睡眠不足を取り戻すために普段より長い睡眠時間を取りたい場合は、前の日に普段より早く就寝し、翌朝に同じ時間だけ遅く起きる(例えば前の日に1時間早く寝た場合は翌朝に1時間だけ遅く起きる)ようにすれば睡眠中央値は普段と同じになるため、起床時間は異なりますが体内時計と生活リズムの乱れは最小限に抑えられます。
朝起きたら太陽の光を浴びる。
太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されます。
太陽光によって分泌が抑制された睡眠ホルモン「メラトニン」は、その14~16時間後に再び分泌が始まります。
日中の習慣
日中はできるだけ活動的に過ごす。
良い睡眠を得るためには日中と夜間のメリハリが大切です。
また日中に明るい光を多く浴びることで、夜間に分泌される睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌量が増えることが分かっています。
夜間(就寝前)は心と体をリラックスさせることが大切ですが、逆に日中は活動的にイキイキと過ごすようにしましょう。
30分以上の仮眠は控える。
長すぎる仮眠は夜の睡眠を阻害する恐れがあります。
仮眠をとる場合は、午後1~3時の間に15~20分以内(高齢者は30分以内)の仮眠をとるようにしましょう。
夕方から就寝の3時間前までに軽い運動を習慣的に行う。
習慣的に運動を行う人は不眠の割合が少ないことが分かっています。
体の負担が少なく習慣的に継続できる有酸素運動(速足で歩く散歩やゆっくり走るランニングなど)を夕方から就寝の3時間前までに行うことで良い睡眠が得られやすくなります。
逆に体に負担のかかる激しい運動は睡眠を阻害する恐れがあります。
夜(就寝前の3時間)の習慣
夕食は就寝の3時間前までに済ませる。
食事をとると消化・吸収のために胃や腸が活発に働くため、脳は興奮した(リラックスできない)状態になり、この間は良い睡眠が得られにくくなります。
食事をしてから消化が落ち着くまで最低でも3時間程度は必要となるため、夕食は就寝の3時間前までに済ませましょう。
入浴は就寝の2時間前までに済ませる。
人は眠ると深部体温(脳や内臓の体温)が0.5~1.5度下がり、深部体温が下がることで良い睡眠を得ることができます。
また人は上がった深部体温が下がるときに眠気を感じます。
就寝の2時間前までに入浴で体の芯をしっかり温める(深部体温を意図的に上げる)と、2時間後の就寝のタイミングで深部体温が下がりスムーズな入眠が得られやすくなります。
就寝の2時間前から飲酒を控える。
飲酒は寝つきこそ良くなりますが、肝心の睡眠の質は大きく低下します。
飲酒は就寝の2時間前(できれば3時間前)までに済ませ、就寝時には体からアルコールが抜けた状態にしましょう。
就寝の2時間前からスマートフォンの使用を控える。
スマートフォンの液晶パネルから発せられる光(ブルーライト=寒色系の光)が目に入ると睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されてしまうため、就寝の2時間前からはスマートフォンの使用を控えましょう。
ナイトモード等を活用する場合も長時間の使用は控えましょう。
就寝の1時間前から照明を暖色に切り替えて明るさを弱くする。
寒色系の光が目に入ると睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されてしまうため、分泌を促すために就寝の1時間前(できれば2時間前)から調光機能などを利用して照明を暖色系の光に切り替え、明るさも薄暗くなる程度まで弱めましょう。
アロマグッズ等を使用して心と体をリラックスさせる。
就寝前は心と体をリラックスさせることが大切です。
心地よいと感じるアロマの香り(合成香料ではなくエッセンシャルオイルなどの天然香料の香り)は心と体のリラックスを促す働きがあると言われています。
夜(就寝時)の習慣
眠くなるまでベッドや布団に入らない。
ベッドの上で眠れない時間を過ごしていると、無意識に脳が「ここ(ベッド)は眠れない場所」という情報を刷り込んでしまいます。
眠くなるまでベッドに入らず、ベッドの上では睡眠以外の行為を一切行わない習慣を続けていると、ベッドに入ることで脳が無意識に眠りのスイッチを入れて自然に睡眠モードに切り替わり、スムーズな入眠が得られやすくなると言われています(入眠儀式効果=スリープセレモニー効果)。
就寝時は就寝用のパジャマを着る(寝る直前に着替える)。
睡眠中はコップ1~2杯の寝汗をかくと言われていますが、化学繊維を使用したパジャマやスポーツ用ジャージーは吸水性に劣るため寝汗を効率よく吸収できず、不快な蒸れにより睡眠が阻害される恐れがあります。
また袖口や裾口にゴムが使用されているスウェットシャツやスウェットパンツは、吸水性こそ優れるもののゴムの締め付けによって寝苦しさを感じたり寝返りがうちにくくなったりするため睡眠が阻害される恐れがあります。
就寝時は吸水性の高い天然繊維(綿やシルク、麻などの)を使用した就寝用のパジャマを着用しましょう。
また寝る直前にパジャマに着替える習慣を続けていると、パジャマを着ることで脳が無意識に眠りのスイッチを入れて自然に睡眠モードに切り替わり、スムーズな入眠が得られやすくなると言われています(入眠儀式効果=スリープセレモニー効果)。
物理的に体に合った寝具を使用する。
マットレスや敷布団、枕は、体に負担のかからない寝姿勢がとれて寝返りがうちやすいもの(物理的に体に合ったもの)を使用しましょう。
快適な睡眠環境(温度と湿度)を整える寝具を使用する。
下に敷く寝具や上に掛ける寝具は通気性、保温性、吸水性、発散性に優れたものを使用し、寝床の温度や湿度を快適な状態に保ちましょう。
遅くとも午前0時には就寝する。
年齢や個人差によっても異なりますが、一般的に適切な睡眠時間は約7時間(6時間30分~7時間30分)だと言われています。
ですが、7時間の睡眠時間が確保できれば何時に寝てもよい訳ではありません。
睡眠は体内時計によってコントロールされているため、午前3~5時を過ぎると深い眠りにつきにくくなります。
一晩の睡眠は前半に深い眠りが多く現れ、後半に浅い眠りが多く現れるため、深い眠りにつきにくくなる午前3~5時までに睡眠の前半が終了するように遅くとも午前0時までには就寝するようにしましょう。
夏場はエアコンを活用する。
暑くて寝苦しい夏場はエアコンを活用してください。寝苦しさを我慢して寝ようとすると、ぐっすり眠れないだけでなく睡眠中に熱中症にかかってしまう恐れがあります。
人が快適に眠るためには「室温26度以下、湿度50~60%」の環境が理想的だと言われていますが、必ずしも室温が26度以下でないといけない訳ではありませんので、エアコンの設定温度は26~28度を目安にご自身に合った温度を見つけてください。
日本睡眠改善協議会公認
睡眠改善インストラクター市田商店 店長 斎藤拓也